【座右の「書」
昔から買い物が不得手なので出来るだけしないことにしているのだが,珍しく「買ってよかった」と思えたものの一つに電子辞書がある。電車の中で,広辞苑(岩波書店に恩を売る趣旨ではなく,単に「分厚い国語辞典」の代名詞として使わせていただきます)だけでなく,漢和辞典,さらには外国語辞典までひけてしまうのだ。凄すぎる。電子辞書なしの生活が考えられなくなってしまった。
では,電子辞書は広辞苑を駆逐するか。愚見はNOだ。脈絡なく目当ての単語以外の説明も読んで「へぇ〜」と思ったり,目当ての頁に辿り着く前に趣のあるイラストに惹かれて読み進めたりで,いつの間にか読書モードに入ることがあるが,電子辞書にはそのワクワク感がない。とあるインタビュー(確か井上ひさし氏だったと思う)の回答「無人島に行くのに一冊しか本を持参できないとしたら,広辞苑を選ぶ」を読んで以来,私もそうしようと決めている。が,いざ無人島へ行く段になって「どうぞ」と電子辞書を渡されたら,「それは違う」と叫びたくなると思うのだ。】
以上は,私が2007年に書いた文章だ。10年前の私は,電話に電子辞書以上の機能を詰め込んで持ち歩くようになるとは,想像していなかったと思う。
そして2017年の私は,めっきり,電子辞書を使わなくなってしまっている。意味や使い方が分からない単語が出てきたらGoogleにポン,英語で文章を書かなければならなくなったら翻訳サイトにポン,でおしまい。あれだけ感動した電子辞書は,電池切れしたまま,机の上で眠っている。
でも振り返ると,電子辞書を使わなくなって,明らかに語彙力が落ちた気がする。加齢により記憶できる量が減ってきているだけかもしれないが,Googleや翻訳サイトにポンだと,その場限りで,調べた語句や単語が身に付かないように思うのだ。「これ前にも検索したな」と思いながら検索することも多い。やはり,不便で時間はかかるけれども,電子辞書に打ち込む作業を経ることで身に付くものなんじゃないかと思う。
来年の目標は,「電子辞書を使う」にしよう。広辞苑の新版も買ってみようかな。
(弁護士 佐藤真奈美)
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