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コラム(2019.5.10)

職場がつらいとき

 私は今までに2つの職場しか経験したことがないのだが,どちらの職場もすごく居心地が良くて,職場がつらいと思ったことは一度もない。むしろ職場環境の良さのおかげで仕事ができているところがある気がする。でもそう思えることは幸せなことなのだと,労働相談を聞くことが多い故にしみじみと思う。特に,社会人1年目で入った職場がひどいところだったら,本当につらい(こんな言葉で表現できるものではない)だろうと思う。
 職場がつらいけれど読書する気力は残っているという方に試していただきたいのが,津村記久子さんの本だ。津村さんは,芥川賞作家さんなのだが,会社勤めを長くしておられ,自身がひどいパワーハラスメントに遭ったこともあるそうで,そのような背景があるからかハラスメントの被害に遭っている人が読んだら救われる思いになるのではと感じる話が多い。社内で通り一遍のパワハラ研修をするだけでなく,みんなで津村さんの『この世にたやすい仕事はない』や『ポースケ』あたりを読んでみたら,職場環境が良くなるように思うのだが,いかがだろうか。
 このように書くと誤解を招きそうだが,津村さんの小説で常にハラスメントがテーマにされている訳ではない。さして大きな出来事は起こらない,是枝監督の映画のような話も多いのだけれど,読後,「私も明日からまたがんばろう」という心境になれる。それがどうしてなのか私には説明できずにいたのだが,津村さんが朝日新聞のインタビューで,特別じゃない日の積み重ねの結果ちょっとだけ何かが変わるっていうことを書いてきたという風に仰っていて,なるほど,と思った。
 津村さんの小説にはティーンが主要人物の小説も多く,「こんな友達がいてくれたら本当に素敵だろうな」と思う人物がたくさん出てくるので,娘に薦めたい本リストには津村さんの本がたくさん入っている。学校で道徳の授業をするより,津村さんの『エヴリシング・フロウズ』あたりをみんなで読んだ方が有用なように思うのだが,いかがだろうか。
 話がどんどん逸れてしまったが,職場がつらくてどうしようもないという方には,ぜひ津村さんの本を試していただきたい。そしてもし少し元気が出たら,そのつらい状況は一人で我慢する必要はなくどこかに相談することによって変えられることかもしれないから,誰かに話してみて欲しい,と切に願う。
(弁護士 佐藤真奈美)

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