本文へスキップ

7人の弁護士があなたのお悩みを解消します。

TEL. 082-228-2458

〒730-0014  広島市中区上幟町3−20KOLME上幟2階

コラム(H24.11.10)

優しい遺言

 テレビのバラエティ番組などによく出演してたコメンテーターの方が若くして亡くなられたというニュースを少し前に耳にしました。ニュースによれば,その方は自分が亡くなることを見越して,自分の葬儀の段取りや参列者に宛てた手紙まで全て用意されていたとのこと。
 仮に私だったら,自らの死を目前にして,そのように死後の処理をきっちりできるだろうか・・・と,色々と考えたりもしますが,正直よく分かりません。それは,まだ自分自身が死ぬことをリアリティをもって受け止められていないからかもしれません。

 私が,弁護士としての仕事をしていく中で,「遺言」というかたちで亡くなった人の最期の意思に触れることがあります。遺言をする人の思いは,色々あって簡単に一つにはまとめられないとは思いますが,一つ共通している思いは「遺された家族に自分の(遺産)のことでけんかして欲しくない」という思いのような気がします。遺言には「遺される者への優しさ」が成分として,某鎮痛剤のように含まれているのかもしれません。「優しさ」の含有率は遺言によって違いがあるかもしれませんが・・・。

 しかし,そのような思いが込められた遺言によって,遺族がもめるようなことは少なくありません。一概には言えませんが,一番もめるケースは,「自筆証書遺言」の方法により遺言している場合のように思います。

 自筆証書遺言とは,自分一人で作成できる遺言で,書店でも「簡単にできる遺言の方法!」みたいなタイトルで自筆証書遺言の方法が書かれた書籍がたくさん売られています。
 一人で遺言できるなら簡単で一番いいじゃないか,と思われるかもしれません。
 しかし,法律上,どのような遺言が形式上有効かということが細かく決まっており,法律上の要件を満たさない遺言は,無効になってしまうおそれがあります。つまり,自分一人で遺言を遺言状をしたためた場合,場合によっては,気づかないようなちょっとしたことで法律の要件を満たさない無効な遺言になるということもあり得るのです。

 また,形式上遺言の要件が満たされていたとしても,内容が不明確で,遺言としての法律上の効果が発生しない場合があります。例えば,「土地をAに相続させる」とは書いてあるが,土地がどこの土地かはっきり書いていない場合には,「Aに相続させるべき土地が特定できず相続は認められない」,判断されてしまいます。

 「遺されたものにはけんかして欲しくない」という優しい思いを込めてしたためた遺言が,けんかの火種になるのは,本当に悲しいことだなあと思います。

(弁護士 松岡 幸輝)

広島法律事務所

〒730-0014
広島市中区上幟町3−20
KOLME上幟2階

TEL 082-228-2458